Title: さむいひのおもいで。
夜中に思い立って海へ行ったことがある。
ナビのついてない車に乗ってた頃の話。
天気によって色の変わるタワーの近くに住んでいた友達をひろって、深夜の高速をはしらせて鎌倉へむかった。ナビなんてないから、初めて走る道にどきどきしながらもなんとか海がみえてきてほっとしたのを覚えてる。
夜中の海には誰もいなくて、ライトを消したら真っ暗で、なんにもみえなくて、目が慣れるまではどっちがどっちかもわかんないくらい暗くて、ああいま海に落ちたら、上とか下とかわかんなくなりそうと思った。
それから真っ暗な砂浜をあるいて、桟橋をみつけて、桟橋の先まであるいていったら、そのあたりで雪が降ってきた。
急に振ってきた雪にわくわくしながら、雪が海に落ちるのを眺めてたら、ほんの数分で海から霧が立ち上ってきて、あたりが真っ白になった。はじめは海が沸騰したのかとおもうような煙のでかただったのに、あっというまにほんとにスモークをたいたみたいに、桟橋なんか隠れちゃうくらい足元が全部真っ白になった。
桟橋と海の境もみえなくなって、どこから海でどこから砂浜かもわからないくらいに。
うまれてはじめてみる光景だった。
右も左も分かんないくらいの真っ暗闇で、地面はくるぶしくらいまで真っ白の霧。
頭の片隅で、やばいなぁなんか方向感覚おかしくなりそう、このまま海に落ちたら死ぬだろうなとか、突然海からざばって誰か上がってきたら怖いなぁとか妄想をして1人でわくわくどきどきしてた。
いまでもその光景を思い出せる。
その日の帰り道をどこをどう帰ってきたのかなんて覚えてないけど、その光景だけは、いまでの脳裏にやきついてる。
雪なんて降るなんて思ってなかったから体が芯から冷えて、やっとのことで車に戻った時には、震えるくらい寒くて唇が真っ青だったのも覚えてる。
あれが一体何年前で、あの場所がどこだったのかすらも曖昧なのに、今日みたいなものすごく寒い日にはたまにふと思い出すんだ、その記憶を。
もし願わくばもう一度あの夢みたいな光景をみてみたい。
たぶんいろんな気象条件が偶然に重なって起きたんだろうけど、そんな奇跡みたいな光景をもう一度みたいなぁ。
POSTED @ 2009.10.26 |
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