• PHOTO最終更新日2010年10月11日



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Title: 悪人正機


善人なほもて往生をとぐ。いはんや悪人をや。しかるを世の人つねにいはく。「悪人なほ往生す。いかにいはんや善人をや」

善人でさえ往生できるのだから、悪人はいうにおよばないということ。世間の常識からいえば、悪人でさえ往生できるのだから、善人はいうにおよばないとなりそうだが親鸞はあえて正反対のことをいった。

この悪人正機説は真宗では大切な意義のあるもの。

悪人正機の中にある悪人は何を指すのかという問題にぶつかって。

たくさんの人といままでたくさんの話をしてきたけどいまいち腑に落ちてこれか。という実感がわかないままだった。

でもこないだあるときふと思った。

ある映画の話。内容を説明すると。

海外であるNGO団体の少年が武装組織に拉致された。武装組織は少年の命と引き換えに日本政府に莫大な身代金を要求した。

しかし日本政府は、武装組織には屈しないという国際世論を背景にそのNGO団体にはだいぶ前から国外退去の避難勧告をだしているのに、それを無視してその場に滞在した彼自身にも責任があるということを盾に身代金の要求をしぶった。それを受け国内世論も彼らに責任がある。一人の為にこんなに国を振り回してといういうバッシングをはじめる。

まるで少し前にあった邦人拉致事件をそのまま再現したかのようなシナリオだ。

事実あのとき自分自身、あそこがあぶないのわかってるのになにしてんだ。自業自得だよと思った。
退去がでてるのにそれから入国するなんてばかだと思った。国として優先すべきを考えるべきだと恥ずかしげもなくそう感じた。

そして映画の中では、その家族がどれだけの迫害を受け、父親は職を終われ。最後は名前をかえるまで追い詰められる家族の苦悩が描かれる。

そして数年後。

当時外務省で機密扱いされていた文書が明るみに出る。

その文書には。

その拉致されていた彼のいた村に退去命令がでたのはその拉致の後であったこと。つまり彼は退去命令を知らなかった。それを政府は黙殺し世論をたくみにあやつり政府の失態を個人におしつけるという構図をつくりだした。

そしてその機密文書とともにその国で彼がどれだけの功績を残してきたか、現地の子どもたちからのメッセージやなど彼の人間性を示すような証拠はぜんぶにぎりつぶされていたこともわかる。

つまりは、国外退去の連絡を現地の大使館はしっかりとしなかったこと。彼が最後まで現地の子どもたちの為に奮闘してすばらしい活躍をしていたという事実が世論に流れれば政府は多額の身代金を払わなければならない上に、国際社会からもバッシングをうけることになる。だからこの事件を彼が無謀にも国外退去がでているにもかかわらず興味本位で入国したと少年というシナリオをつくることによって問題を片付け、それに日本中が踊らされその情報を鵜呑みにしたたくさんの日本人が彼を、そして家族をバッシングした。

そういう内容のものだった。

さらに映画の話からそれるが。

最近おおくの信金銀行でエコ預金というサービスをスタートした。

その地域のリサイクル率や河川の汚染、空気の汚染が前の年よりも減らすことができれば預金利率をあげるというもの。

そのサービスは大好評でたくさんの預金があつまった。むろん預金者は自分もエコに協力している気持ちになるし、もしかしたらその地域では空気もきれいになり水もきれいになるかもしれない。それに利率も上がるし一石二鳥悪いことがひとつもないかに見えるけど。

そのたくさんあつめられたお金。

銀行はもちろん運用するためにいつもよりも多額の投資をファンドや海外に投資する。

その多額の投資で自分には目に見えない世界のどこかでたくさんの木が切り倒され、たくさんの汚染を生み出していないといいきれるんだろうか。途上国ではお金になるからと土地をぜんぶバイオエタノールの畑に変えているという。その弊害が生みだすものの計り知れないこと。

ダーウィンの悪夢という映画があるけど日本へのナイルパーチの輸出量は年間2500トンを超える。

エコ預金して、そのお金で木が切られていることを知らずに。フィレオフィッシュをたべてその魚がとれる国ではなにがおきてもおかまいなしなのが現実で。情報や報道を鵜呑みにして油まみれの水鳥に同情する。

そういう生活をしながらフリーチベットと叫ぶ矛盾。

正直なにもしないよりもましだということはよくわかるし、じゃあどうすればいいんだ。といわれてもどうしていいかわからない。えらそうなことをいってもなにもできない自分。

人間は。善人とか悪人とか。正しいこととはなにかとか。そんな価値観をいくら掲げていきていても、ぜんぶはかなくも形のないものに過ぎない。

そして人は図らずもどこで悪人になるか善人になるかなんてことはわからないしむしろ自分が胸を張って最後まで正しいと胸をはれることなんてなにもなくて。正義なんてことばは幻想にすぎないと思う。

ここ数日モヤモヤしてたものがすこし晴れてきて見えてきたことは。悪人正機のさす悪人がまさしく自分自身だということ。

善人なんていないということ。

ほんといま自分にできることは目の前のこと。
この一瞬をしっかり生きることしかないんだと実感する。

善人なほもて往生をとぐいはんや悪人をや。

POSTED @ 2008.05.29 | Comment (0) | Trackback (0)

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  • 自己紹介:1980年1月9日生まれ。どこからを趣味と呼んでいいのかは模索中。好奇心は旺盛。