• PHOTO最終更新日2010年10月11日



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Title: 夏におきた事件の話 完結編


その後ひたすらおびえ続けお昼になっても
PHSも家の電話もならなかった。
捕まってしまったT兄弟の電話は朝からつながらない・・・・・

しびれをきらしてH君やY君に電話をするが
みんなもいまだ連絡がないという。

H君に至っては暇なので遊びに行こうと言っている。

さすがに遊びに行く気にはなれず家で悶々としていると
夕方まえにT弟からの着信。

大の字で漫画を読んでいたのだが一瞬で電話に飛びついた。

消え入りそうなT弟の声がした

もしもし

もしもしと返事する時間すらもったいない

おまえ大丈夫か?どうなった?

電波が悪いだけじゃない。
間違いなくT弟の声はとぎれとぎれだった。

大丈夫なわけないだろ。
やっと解放されたよ
いま隠れて電話してるから突然きるかも・・・・・

彼の話によると
その後のいきさつはこうだ。

あの後横道に逃げ込んだT兄弟
走り続けるうちにバラバラになり
兄は無事僕らに合流

T弟はあまりの足の痛さに
逃走を断念・・・・
追いかけてきた警官に腕を捕まれて観念したという。

でもその警官が無線でパトカーを呼ぶのを聞いて
怖くなりその警官を突き飛ばしまたも逃走

このへんの往生際の悪さはぼくらみんなに共通している。

そしてそのままひた走り、近くの小学校に逃げ込んだという。
しばらくそこに隠れていたそうだ。

その茂みの中でとぎれとぎれに警察無線が聞こえたという

「え~こちらOO・・・いまXX小・・・付近です・の帽子・・・茶色の帽子・・・・」

茶色の帽子!?

間違いなく俺をピンポイントで追ってる・・・・

そう思った瞬間にものすごい孤独感と
みんなで決めた取り決めが頭を駆けめぐったという。

同時に記憶の片隅に猛ダッシュで逃げるY君の背中が
スローモーションでよみがえったという。

無線でパトカーを呼ばれ数台のパトカーと
数人の警官が周りをうろうろしている。

もうだめだ。

直感的にそう思ったという。

自分から校門のところまででていって一言

すいませんでした。

茶色の帽子は一応脱いで謝ったという。

自首すれば罪が軽くなると思ったそうだ。

そして今度はしっかりと両脇を抱えられ
パトカーに押し込められたという。

そして警察署に連行

その途中で僕らとすれ違っているのだが
彼は気づかなかったようだ。

そしてここからがT弟にしては根性を見せたところだ。

まず名前を名乗りなさいと言われたらしい。
それには素直に答える。

次に家の住所
それも素直に答える。

次のどこの学校だ?に対して
それだけは勘弁してください。それだけは勘弁してくださいを連呼したという。

それほど僕らは退学をおそれていた。

次に他の仲間の名前は?
知りません。今日会った人たちばかりです。

嘘つけ

本当です

嘘つくな

本当です。

どこで会ったんだ。
え・・・・駅で・・・・

(もっとましな嘘をつけ・・・・)

誰だかいいなさい!

いえません。

なんとT弟ここで一切口を割ることはなかったという。
それのおかげで家に帰るのがだいぶ遅くなったらしい。

(まてよ・・・口を割らなかったのになんで帰れたんだ・・・・)

その疑問はのちに明らかになる。

そして明け方6時過ぎに父親が警察署へお迎え
父親と警官に両脇を固められこっぴどくやられたそうだ。
この話については多くを語らなかったが

一言、おまえらと金輪際つきあうなと言われたよ・・・・

そりゃ言われるだろう。
俺が親でもそういうね。

まちがいない。

ところでどこにいくつもりだったんだ?

ふとお巡りさんに問いかけられ。

皇居です・・・・・

この答えに父親と警察は絶句したという・・・
おまえらそこまでたどり着けなくてよかったな
えらいことになるところだぞ・・・・・

その答えに続いて

最後に家に帰りたければ首謀者の
名前だけでも言いなさいと言われたそうだ。

親父にも警察にもつめよられたそうだ。

これを言わなきゃ帰れない・・・・

一睡もしてない状態で何時間も怒られ続け

この一言を言えば帰れるんだ・・・・・・・・

心の中の悪魔がほほえんだという。

OO君です・・・・・<俺の名前

えっ・・・・・・・・・・うそ・・・・・・・

おれは絶句した。

ごめん!ほんとごめん!
でもさ、その後に絶対にお前に連絡したり、
なにか処分するようなことをしないでくださいと
お願いしてきたから・・・・

じゃそういうことでまたかけるよ。

がちゃ

つーつー

おいおいそういうこととはどういうことだ。
しばらくなにも考えられなかった。

俺の名前は間違いなくブラックリストにのった。
皇居に乗り込もうとした少年集団の首謀者として
このままではテロリストのリストにすらのりかねない・・・・

またブレーカーが落ちた。
2日で2回目の停電だ・・・

しばらく放心状態でいると

H君からの着信

さっそくこの話を聞いたらしい
電話をとるといきなり

おまえ!絶対口割るなよ~

かるく半笑いなのがかんに障る

怒りというか情けなさというか、
いろんな感情が入り乱れていた。

おれはできるだけ冷静に静かに重々しく一言返した。

おまえはほんとに死んだらいいと思う。

そういうと同時に電話を切った。

その後しばらくおびえたネズミのような
電話が鳴るたびにビクビクする日々を過ごすのだが

いまだ今日まで警察署からの電話も出頭命令もない・・・・・・

これが僕らの夏の思い出。

その後この中の何名かは他の理由で学校を去ったり
海外に行ってしまったり、北海道に進学したりと
それぞれがそれぞれの道を歩いている。

いまはなかなかみんなで会う時間もないが
会えばいつもこの話になる。

そんな一夏の思い出の話


POSTED @ 2005.06.29 | Comment (0) | Trackback (0)

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  • 自己紹介:1980年1月9日生まれ。どこからを趣味と呼んでいいのかは模索中。好奇心は旺盛。