• PHOTO最終更新日2010年10月11日



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Title: 続・夏におきた事件の話


いよいよ僕らは某遊園地に乗り込んだ。
一人ずつ柵を越えと中に入る。

園内に着地した8人は顔を見合わせるものの
誰も口を開こうとしなかった。

みんなの鼻息と自動販売機の低い機械音だけが
妙に耳に焼きついている。

それぞれが緊張と興奮で垂れ流しのアドレナリンに
酔いしれていたように感じる。

人のいないひっそりとした遊園地の静けさが
妙な違和感と不気味さを生み出していた。

昼間、人の多いところほど人がいなくなると不気味な違和感を生み出す。

はじめはみんなきちんと等間隔を守り
おそるおそる群れで行動していたのだが
所詮スタンドプレーの固まりのような集団。
ひとり、またひとりと好き勝手に歩き出す。

「おお!」

そのうち先行していた一人が声をあげた。

真っ暗な中でみんなはその声をたよりにそこへ駆け寄った
ちなみに声をあげたのは例のF君だ。

みんなが行き着くとなんと大きな樽に
蛇口のようなものがついている屋台がおいてあり
そこには大きく「ビアガーデン」と幟が立っている。

そこで得意満面のF君

「みてこれ」

おもむろにその樽の蛇口をひねる。

なんとそこからビールがどんどんでてくる。

僕らは狂喜乱舞した。

フライングして蛇口に飛びついたH君は
はやくも浴びるようにビールを呑んでいる。

この時点で悲劇への激鉄はカチリと音をたてて立てられた。
無論このときの僕らはそんなことに気づくはずもない・・・・

ただでさえバカなのが8人もいて
あびるほどビールを呑んでいるのだ。
もう救いようもない。

でもこのときの光景は今でも焼き付いている。

双子のT兄弟のやりはじめた江頭の物まねが
僕らのつぼにはまりビールを浴びながら
腹がつるほどわらった。

そして浴びるほどビールを飲んでいたH君が
屋台に潜り込みなんと枝豆を見つけてきた。

またも僕らは狂喜乱舞した。

それに負けじとT君も屋台の中からナッツの袋を見つけだす。

そんなことをしながら僕らは
ひたすら笑いつづけた・・・・

そのとき

まだ屋台に潜り込んでいたF君が
今夜はどうもテンションが高かったのだが
その時は頭だけ屋台につっこんだまま
今日一番の奇声を発した。

みんなが振り向くと
もぞもぞと屋台からはい出してきたF君の手には
小さな金庫がぶら下がっていた。。
屋台の売り上げが入ってるのだろうか
かなり重そうだ。

みんな一瞬静まりかえる。
F君金庫を手にしたまま
目をキラキラさせている。

でもこのとき誰一人として
金庫に駆け寄ろうとはしなかった。
みんなのなかでそこには
一線を引いていたんだと思う。

僕は現金というリアルなモノを
いまの夢見心地の中に持ち込みたくないと思った。
なんか一気に夢から覚めちゃうような感覚がした。
少なからずみんなの中にも同じような気持ちがあったんだと思う。

だれからでもなく

おいFそれはもどしとけよ。
それはやめよう。

という声があがった。

でも俺の横で浴びるほどビールを飲んでいた
H君の目は間違いなくキラキラしていた。

それなのに右にならえで
それは・・・まずいよ・・・
と言った声は誰よりも小さかったのが印象的だ。

F君はしぶしぶだがそれをもとにあった場所に戻しにいった。

こんだけやっといてって思うひとがいるかもしれないけど
人のお金を盗むってこととこのとき僕らのやっていることは
まったく別だと思う、どちらも悪いことだと言えばその通りだけど

バカにもバカなりにポリシーはある。

あの頃の僕らはみんな自由を楽しむとは
どういうことかを知っていたんだと思う。

もしあそこであの金庫をあけていたら
この思い出はいつまでも笑いながらはなせる
バカな話にならなったような気がする。

この時この事件があって
ああ自分の友達がこいつらで
ホントによかったなと思ったのを覚えてる。

そしてこの時が「夜の遊園地計画」のピークだったということを
この後になって知ることとなる。

もうほろ酔いなんてもんじゃない状態のバカ8人

そろそろ夜の遊園地に飽き始めたのだが
そんな簡単に今日の火照った体と
高ぶった気持ちが静まるはずがない。

もっとでかいことしたいなぁ
三面記事とかにぎわしたいなぁ・・・・

話はどんどん危険な方向へ向かう。

その時おれの口から飛び出したとんでもない一言が
ついに悲劇の激鉄を落とした。

ここが運命の分かれ道だったのだ。

「そうだ皇居にいこう!」

正直軽いノリだ。半ば冗談も入ってる。

そしたらべろべろに酔っぱらったH君

「天皇陛下に会えるかも!会ったことないし!」と言ったのだ。

バカだ・・・つっこみようもない。
おまえなど間違っても一生お目にかかることはない。

次に口を開いたT君

「いやもう寝てるだろ!」

そういう問題ではない。

そこにいままで黙っていたY君
ちなみに彼は茨城出身だ。

「いくしかね~べぇ!」

やっと口を開いたかと思えば・・・
だいぶ酔っているようだ、鼻息がだいぶ荒い。

この時の理性と冷静な判断力のかけらもない
野放しの野犬状態の僕らを止める術は
いま考えてもひとつも思いつかない。

そして僕らは

そうだ京都へいこう!

のノリで

そうだ皇居へ行こう!

を実行に移してしまったのだ。

今思えば本当にバカだ。
だれも異を唱えなかったのは
この時点で皇居が日本でどれだけ重要な施設であるのか
理解してる奴がだれもいなかったからに他ならない。

>>つづく

POSTED @ 2005.06.27 | Comment (0) | Trackback (0)

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  • 自己紹介:1980年1月9日生まれ。どこからを趣味と呼んでいいのかは模索中。好奇心は旺盛。